Kellopolkka / 鐘のポルカ
作曲:マルッティ・ポケラ(伝承曲を基に)
演奏&パフォーマンス:ハンヌ・サハ, アンッティ・ケットゥネン
マルッティ・ポケラは多くの伝承曲・民謡をカンテレで演奏しています。
ところがポケラの編曲はオリジナリティあふれる要素を多分に含んでおり、むしろ伝承曲を基にした作曲作品と呼ぶ方が適している場合が多々あります。
この『Kellopolkka(鐘のポルカ)』もそんな作品の一つ。
ポケラはこの曲について以下のような言葉を残しています。
… Kellopolkka…そう、冬戦争(※1)中に印象的なことがあったんだよ、僕らのハーパヴェシの町にクフモから当時77歳のおじいさんが逃れてきていたんだ。ああ、なんてこと、彼は私の父のカンテレ(※2)を5弦カンテレのように弾いたんだよ。彼は5本の弦で、このKellopolkkaの冒頭部分を弾いたんだよ、まるで弾いてなんかいなかったように、あっという間にね。彼は左手を何かしらにも使っていたんだ。彼が弾いたいくつかのメロディの一つだった。それから彼は、全弦を使って何曲か弾いたんだ、特別に驚くようなものはなかったけれど、それでも弾いていた。このKellopolkkaがその後も頭に残ってね、それがスタートだった…僕は彼のこの旋律に続きを作っただけなんだ。
あれこれ色々試したりしながら、ハーモニクスを使うことにした。ハーモニクスを深堀りして試し始めたんだ。(Martti Pokela 1982, インタビュアー:Hannu Saha)
※1 冬戦争(Talvisota):
第二次世界大戦中の1939年11月30日、ソビエト連邦によるフィンランド侵攻をきっかけに始まった戦争。
※2 父のカンテレ:
マルッティ・ポケラの父トイヴォ・ポケラが、カンテレ奏者パシ・ヤースケライネンの工房で製作した28弦カンテレ。
当時ハーパヴェシに住む男性はカンテレを自作することが町のしきたりとなっていた。
トイヴォ・ポケラは農民で音楽を趣味としながらもカンテレは演奏しなかった。
SAHA, Hannu: Luovuutta mukaan eli Martti Pokela ja kansanmusiikki, Kansanmusiikki 1/1982
耳にした旋律を基に、古くからのポルカのリズムをつけ加え、今となってはポケラの代名詞ともいえるハーモニクス奏法で彩られた華やかな一曲に仕上げられたこの曲は、今なお5弦カンテレのレパートリーとして多くの奏者が演奏しています。
こちらの動画はハンヌ・サハ、アンッティ・ケットゥネンによる1988年の演奏動画。
向かい合って淡々と演奏しながら、大真面目な顔をしてコミカルな振り付けをはさみこんだ遊びゴコロあふれるパフォーマンスです。見ていて楽しいだけではなく、演奏技術も参考になり何度でも見てしまいます。
パフォーマンスはさておき、5弦カンテレの魅力を存分に生かした一曲、ぜひレパートリーに加えてみて下さいね。
※楽曲タイトル和訳は、日本カンテレ友の会による仮訳