Rankan polkka : Keski-Suomen kantele
ランカのポルカ – 中部フィンランドのカンテレ
レーベル:Kanteleliitto
リリース年:2012
収録曲&奏者:
1. 不明: Hienohelma
2. 不明: Jenkka
3. Liinus Simpsiö: Vanha polkka
4. Liinus Simpsiö: Vanha valssi
5. Alfred Backman: Rankan eli Returankan polkka
6. Alfred Backman: Hienohelma
7. Arvi Pokela: Oma polkka, eli Arvin polkka
8. Arvi Pokela: Nytkyvalssi
9. Aarne Moisio: Hienohelma
10. Aarne Moisio: Akkojen polkka eli Hytkypolkka
11. Kaino Järvinen & Vihtori Honkonen: Kukkuva kello
12. Antero Saarman & Sirkka-Liisa Moisio: Morjensta Manta
13. Vihtori Honkonen & Sirkka-Liisa Moisio: Vanha valssi
14. Vihtori Honkonen: Suomessa olen minä syntynyt
15. Vihtori Honkonen: Viritys ja säestys edelliseen
16. Aili Lyytinen: Ellan Valten valssi
17. Eero Pihlainen: Hevosvalssi
18. Lauri Kahilainen: Kotikuusen orava
19. Lauri Kahilainen: Masalinin masurkka
20. Antero Saarman:Isä Matin polkka
21. Antero Saarman: Niemen Kallen jenkka
22. Kari & Tuula Dahlblom: Kahvipannu
23. Kannonkosken kanteleyhtye: Syrjälän Heikin maitopolkka
24. Tapio Piilo: Kun minä kotoani läksin
25. Erkki Vihinen & Lauri Kahilainen: Setän polkka
26. Kannonkosken kansansoittajat: Paras polkka
27. Pekka & Aino Kinnunen: Hillin sulkka
28. Pauli Hiekkavirta & Veikko Manninen: Returankan polkka
2012年度 日本カンテレ友の会プレゼントCD
中部フィンランドでは、さまざまな種類のカンテレが、さまざまなテクニックを用いて演奏される地として知られてきました。このCDに収録されているのは、20弦以上のカンテレで奏でられる伝統的なペリマンニ音楽の数々。各機関や個人所有の民俗音楽アーカイブ、古いLP音源等から、中部フィンランドのマスター・ペリマンニたちの選りすぐりの演奏が集められました。
以下は、フィンランドのカンテレ協会誌「KANTELE」2012年4号に掲載された各曲紹介記事の抜粋版です。
1. Hienohelma(ヒエノヘルマ)
2. Jenkka(イェンカ)
公共放送YLEの音源より、サーリヤルヴィの奏者(不明)による演奏。低音弦を巧みに使っています。
3. Vanha polkka(オールド・ポルカ)
4. Vanha valssi(オールド・ワルツ)
リーヌス・シンピスト(Liinus Simpsiö;1887-1957)は低音弦を使わず、兄弟が製作したカンテレでメロディを生かした演奏をする奏者です。音源は民俗音楽学者エルッキ・アラ-コンニ(Erkki Ala-Könni;1911-1996)の採録コレクションより。
5. Rankan eli Returankan polkka(ランカのポルカ)
6. Backman: Hienohelma(ヒエノヘルマ)
アルフレッド・バックマン(Alfred Backman;1885-1973)による良く知られた2つの旋律。CD表題にもなっている「Rankan polkka(ランカのポルカ)」は、サーリヤルヴィの音楽家フレドリック・クランク(Fredrik Krank;1838-1901)から弾き継いだもので、ランカとはクランクの愛称です。
本CDに3人の奏者の録音が収められた「Hienohelma(ヒエノヘルマ)」はサーリヤルヴィ・カンテレでよく弾かれた楽曲で、奏者や地域ごとにタイトル名もさまざま。バックマンはこの曲を「Karvalin Jussin Polkka(カルヴァリ出身のユッシのポルカ)」、あるいは「Tikkupolkka(スティック・ポルカ)」と呼んでいました。他にも「Heramäen pukki(ヘラマキ丘のヤギ)」 「Ootkos velipoika pukki(ヤギよ、お前なのか兄弟)」、西フィンランドでは「 Koko maailman polkka(全世界のポルカ)」の名で知られています。
どちらもエルッキ・アラ-コンニのコレクションより。
7. Oma polkka, eli Arvin polkka(オリジナルのポルカ;アルヴィのポルカ)
8. Nytkyvalssi(ゆらゆらワルツ)
アルヴィ・ポケラ(Arvi Pokela;1914-1984)はサーリヤルヴィのもっとも有名なカンテレ・ペリマンニです。民俗音楽研究所が1983年に彼の演奏をLPとしてリリースしたことで一躍名が知られるようになりました。「最後の味付け奏法(Höystötyyli)=スティック奏法奏者」との呼び名をもつ彼は晩年、その奏法を教える活動もし、その演奏に影響を受けた若い奏者たちがスティック奏法の伝統を今に繋げました。
曲中にはさまざまな”味付け”(装飾)が即興的に加えられ、また低音弦も多く使用した奏者です。
音源は民俗音楽研究所アーカイブより。
9. Hienohelma(ヒエノヘルマ)
10. Akkojen polkka eli Hytkypolkka(ばあさんのポルカ/ぶらぶらポルカ)
森林管理の仕事をしていたアールネ・モイシオ(Aarne Moisio;1912-1988)は、国民学校時代にはもうカンテレを弾いており、後に自身でも楽器を製作しています。スティック奏法を用いて、地域の行事やお祭りで明るいダンス曲をよく披露しました。
モイシオは低音弦を使わず、装飾音も付与せず、オリジナルのメロディを際立たせて演奏しています。カンテレ以外にペリマンニとしてバンジョーやドラムなども弾いたことで、当時はカンテレ奏者としての名はさほど広くは知られていなかったようです。
音源はエルッキ・アラ-コンニのコレクションより。
11. Kukkuva kello(鳴き響く鐘)
サーリヤルヴィの鍛冶屋ヴィヒトリ・ホンコネン(Vihtori Honkonen;1901-1974)は、いくつものカンテレを個人的に製作しています。ホンコネンは結婚しサーリヤルヴィに引っ越してきたカイノ・ヤルヴィネン(Kaino Järvinen;1914-) とともに、ダブル・カンテレ(1台のカンテレを2人の奏者が両側から弾くことができるカンテレ)で演奏しました。ヤルヴィネンは短い弦を手前に、はじき弾く奏法で弾く奏者です。ホンコネンは長い弦を手前にして弾いていましたが、自身の娘には反対側からスティック奏法(スティックではなく硬い革の欠片を使用)を教え、ともに演奏をしたようです。こちらもエルッキ・アラ-コンニのコレクション音源です。
12. Morjensta Manta(ハロー, マンタ)
ユヴァスキュラ出身のアンテロ・サールマン(Antero Saarman;1935-)と、ヴィヒトリ・ホンコネンの娘であるシニッカ-リーサ・モイシオ(Sirkka-Liisa Moisio)の演奏。サールマンは長い弦を手前に引き、モイシオは反対側からスティック奏法で演奏しました。
中部フィンランド民俗音楽アーカイブより。1977年にCD化されているようです。
13. Vanha valssi(オールド・ワルツ)
ヴィヒトリ・ホンコネンとシニッカ-リーサ・モイシオ父娘は、よく一緒に演奏していたようです。こちらは個人が録音した音源をタンペレ大学民俗伝統アーカイブに寄贈したもの。1973年のカウスティネン民俗音楽祭での演奏です。
14. Suomessa olen minä syntynyt(我はスオミで生まれり)
15. Viritys ja säestys edelliseen(前曲のチューニングと伴奏)
ヴィヒトリ・ホンコネンによるフィンランド民謡「Matalan torpan balladi(平屋のバラード)」のソロ演奏と、そのチューニングを用いた伴奏演奏。エルッキ・アラ-コンニのコレクションより。
16. Ellan Valten valssi(エッラとヴァルデのワルツ)
カンノンコスキ出身のアッリ・リューティネン(Aili Lyytinen;1927-1997)は、地元の民俗音楽協会での活動やカンテレ演奏をソロでもグループでも、積極的に行いました。この曲は”オールド・エッラ(Vanha Ella)”と呼ばれたペリマンニ、エリアス・レッパネン(Elias Leppänen)の息子であるヴァルデ・レッパネン(Valde Leppänen)が弾き継いだレパートリーとして知られる、フィドル・ペリマンニの曲をカンテレで弾いたものです。
中部フィンランド民俗音楽アーカイブより。1974年にCD化されています。
17. Hevosvalssi(お馬のワルツ)
エーロ・ピヒライネン(Eero Pihlainen;1926-2000)は自動車工の手伝い、石工として働きながらアコーディオンやカンテレを演奏した奏者です。彼は長い弦側からも、短い弦側からも弾くことができ、バス弦を多用した独特のはじき弾く奏法で知られています。タンペレ大学民俗伝統アーカイブに寄贈された音源。
18. Kotikuusen orava(庭のトウヒのリス)
19. Masalinin masurkka(マサリーニのマズルカ)
1985年にマスターペリマンニの称号を得たラウリ・カヒライネン(Lauri Kahilainen;1916-1995)は、短い弦を手前に、はじき弾く奏法のカンテレ奏者でした。彼はさまざまな製作者のカンテレで演奏し、コンサートカンテレの開発者パウル・サルミネン(Paul Salminen;1887-1949)が製作した大型カンテレで演奏していた時期もあるようです。
中部フィンランド民俗音楽アーカイブより。1977年にCD化されています。
20. Isä Matin polkka(マッティ父さんのポルカ)
21. Niemen Kallen jenkka(カッレ・ニエミのイェンカ)
12番でシニッカ-リーサ・モイシオと共演していたアンテロ・サールマンによるソロ演奏。彼はシター奏者としても知られていました。
中部フィンランド民俗音楽アーカイブより。1977年にCD化されています。
22. Kahvipannu(コーヒーポット)
長年中部フィンランドのカンテレ文化に関する研究を行い、このCDの編者であるカリ・ダールブロム(Kari Dahlblom;1955-2017)と妻トゥーラ(Tuula Dahlblom;1957-)による演奏。カリはさまざまな種類のカンテレを、さまざまなテクニックで奏で、また幅広い分野でのカンテレ研究にも従事し、2012年にマスターペリマンニの称号を得ています。妻のトゥーラもカリと多くの演奏を共に弾いてきました。
音源は自主制作CD「Väinämö」より。
23. Syrjälän Heikin maitopolkka(ヘイッキ・スルヤラのミルクポルカ)
中部フィンランドの町カンノンコスキのカンテレアンサンブル(Kannonkosken kanteleyhtye)は、ヴァイオリン・ペリマンニのペッカ・キンヌネン(Pekka Kinnunen;1898-1982)、娘のアイノ・キンヌネン(Aino Kinnunen;1929-2010)、イダ・キンヌネン(Ida Kinnunen;1930-1990)、リーサ・キンヌネン(Liisa Kinnunen;1935-)、16番でも紹介したアッリ・リューティネンによるグループ。アイノ・キンヌネンは長い弦側から弾き、他の姉妹たちは短い側からはじき弾く奏法で演奏しました。
タンペレ大学民俗伝統アーカイブより。
24. Kun minä kotoani läksin(旅立ちのとき)
タピオ・ピーロ(Tapio Piilo;1924-2012)は、カンテレ製作者であり、民謡の歌い手であり、短い弦側からはじき弾いたカンテレ奏者で、歌とともに演奏することが多かったようです。民謡「Kun minä kotoani läksin(旅立ちのとき)」は彼のお馴染みのレパートリーでした。2012年、レーナ・ハッキネン(Leena Häkkinen)による個人採録音源。
25. Setän polkka(叔父のポルカ)
18・19番のラウリ・カヒライネンとハーモニカのマスターペリマンニであるエルッキ・ヴィヒネン(Erkki Vihinen;1945-)による民謡の共演。YLEラジオの音源。
26. Paras polkka(最高のポルカ)
23番のアンサンブルで弾いていたアイノ・キンヌネンとアッリ・リューティネンは、フィドルを中心としたカンノンコスキの民俗音楽グループ(Kannonkosken kansansoittajat)で伴奏もしていました。演奏はフィドルに負けないようスティック奏法です。グループの活動は現在も続いていますが、1980年代半ばよりカンテレ伴奏は姿を消してしまいました。中部フィンランド民俗音楽アーカイブより。1977年にCD化されています。
27. Hillin sulkka(ヒッリのスルッカ)
ペッカ・キンヌネンとアイノ・キンヌネン父娘による民謡の演奏。
中部フィンランド民俗音楽アーカイブより。
28. Returankan polkka(ランカのポルカ)
5番に収録されていたタイトル曲「ランカのポルカ」を、パウリ・ヒエッカヴィルタ(Pauli Hiekkavirta;1918-1998)の奏でるヴァイオリンを中心に変奏し、ヴェイッコ・マンニネン(Veikko Manninen;1904-2006)がカンテレ伴奏をつけています。
中部フィンランド民俗音楽アーカイブより。
カンテレ協会会員向けの非売品。
※CD・各曲タイトル訳は、日本カンテレ友の会による仮訳