The Sibelius Edition Chamber Music II
シベリウス・エディション 9 – 室内楽作品集 II
レーベル:Bis
リリース年:2007
カンテレ演奏:Suvi Lehtonen-Gräsbeck(スヴィ・レヘトネン=グラスベック)
カンテレ収録曲:
DISK4
10. Moderato / モデラート [JS 130]
11. Dolcissimo / ドルシッシモ [JS 63]
12. [Waltz] Kehtolaulu/Lullaby / 子守歌「ワルツ」 [JS 222]
作曲家ジャン・シベリウス(Jean Sibelius;1865-1957)の没後50周年である2007年から2011年にかけて、スウェーデンのレーベルBIS Recordsからリリースされた『The Sibelius Edition』は、全13巻から成るシベリウス完全全集です。
そのうちの第9巻「室内楽作品集 II」には、シベリウスがカンテレのために作曲した2曲「Moderato(モデラート)」と「Dolcissimo(ドルシッシモ)」、5弦カンテレ伝承曲にヴァイオリンのオブリガードを加えた「Kehtolaulu(子守歌)」が収められています。
演奏しているのは、シベリウスアカデミーで学びカンテレアンサンブルFinn-Kanteleetのメンバーとしても活動したスヴィ・レヘトネン=グラスベック(Suvi Lehtonen-Gräsbeck)。声楽家でもある彼女は、本CDにピアノで参加しているピアニストの夫フォルケ・グラスベック(Folke Gräsbeck)と共に世界各地での公演を行ってきました。本CDでのカンテレ演奏を担っているだけでなく、2001年には「Moderato」、「Dolcissimo」の初演もつとめています。
「Moderato」、「Dolcissimo」は、1896年にシベリウスが妻アイノの従姉妹であるアイリ・ヤルネフェルト(Aili Järnefelt)のために作曲したもの。26歳のアイリ・ヤルネフェルトはこの年、カレリア地峡にある町アントレアで列車事故に巻き込まれ、両足を失いました。治療を続ける彼女への励ましのプレゼントとしてシベリウスが作曲したこの2曲を収める『Två miniatyrer för kantele(カンテレのための2つの小品)』は、シベリウス本人の作品記録から漏れていたため長年存在が知られていませんでした。手稿譜を受け継いでいた方が亡くなった際に遺族が発見し、トゥルクにあるシベリウスミュージアムへ寄贈したことで、ようやく存在が知られることになったのです。
「Kehtolaulu(子守歌)」は、1899年9月、作家ユハニ・アホ(Juhani Aho;1861-1921)の誕生日を祝う場で画家であるペッカ・ハロネン(Pekka Halonen;1865-1933)が弾いたワルツの旋律にシベリウスが即興的にヴァイオリンパートを追加し、生まれた作品です。このワルツの旋律は、ペッカ・ハロネンの母親で伝統的なカンテレ弾きであったヴィルヘルミーナ・ハロネン(Vilhelmiina Halonen;1840-1913)がカレリア地方の鐘をテーマに弾いていた曲で、俗に「Vilhelmiina Halonenのワルツ」と呼ばれています。楽譜集『Kantele- ja jouhikkosävelmiä(カンテレ・ヨウヒッコ曲集)』にも収録されていますよ。本CDではヴァイオリンパートをヤーッコ・クーシスト(Jaakko Kuusisto)が担当しています。
CDは現在も発売されていますので、興味ある方はぜひお求め下さい。またYoutubeMusicで試し聴くことも可能です。
また、本CDに収録されている3曲およびシベリウスとカンテレに関しては、カンテレ奏者はざた雅子さんのWEBサイトでも紹介されています。こちらもぜひお読みください。
※CD・各曲タイトル訳は、NML ナクソス・ミュージック・ライブラリーの記載によります。