カンテレにまつわる用語を集めていきます。(随時更新)
ア行
裏板(うらいた)
[芬: pohja]
表板に対し水平に張られた板。箱型カンテレの底面にあたる。
底板
大型カンテレ
[芬: isokantele, suurikantele]
一般的に20弦以上あるカンテレを指す。残響を消すための消音板がついている。安定感を保つために机の上で置いて演奏されることが多いが、膝上にのせて弾くペリマンニもいる。
表板(おもていた)
[芬: kansi]
楽器の表側にはられた木の板裏板とあわせ共鳴胴としての役割を果たす。
カ行
カレワラ
[芬: Kalevala]
エリアス・リョンロート(Elias Lönnrot; 1802-1884)によって編纂された叙事詩集。フィンランドおよびロシア連邦カレリア共和国における民族叙事詩。『カレワラ』の中で英雄 老ヴァイナモイネンによりカンテレ(一度目は魚のカンテレ、二度目は白樺のカンテレ)が創造される。
カレワラ調韻律
[芬: kalevalamitta]
フィンランド、カレリア、イングリア、エストニア周域に古くから伝わる伝統詩歌の韻律。8音節に4脚の強弱色を定型とし、音楽で表すと4拍および5拍のリズムとなる。
カンテレ
[芬: kantele, kannel]
ツィター属に分類され、木製の胴体に張られた弦をはじき弾く撥弦楽器の一種。フィンランドおよびロシア連邦カレリア共和国の民族楽器。5弦のものから40弦ほどのものまであり、弦数に応じて小型カンテレ(5~19弦)と、大型カンテレ(20弦~)に分類される。
カンテレテーブル
[芬: kantelepöytä]
カンテレを演奏する際に使用されるテーブル。主に大型カンテレの演奏時に使用する。
弦
[芬: kieli]
楽器上にはられた紐。振動させて音を出す。現在カンテレの弦はスチール弦が主流。その他、馬の毛、ガット弦、ブラス弦が使われることもある。
コヴェロカンテレ
[芬: koverokantele]
くり抜きカンテレ。小型カンテレにおいて、1片(または2片)の厚い木片をくり抜くように彫って作られたカンテレ。1片の場合は下面、側面から彫られ、2片の場合は上面から彫り進められた1片に平らなもう1片を組み合わせて作られる。カンテレのもっとも古いタイプ。
小型カンテレ
[芬: pienkantele, pikkukantele]
一般的に5~19弦のカンテレを指す。片手で抱えられるほどの大きさで消音板はついていない。膝上か机上で演奏されることが多いが、今日ではストラップを用い肩から下げて弾く機会も増えている。
コティカンテレ
[芬: kotikantele]
主に20弦以上の箱型カンテレを指すが、現在では36弦で製造されることが一般的。全音階で調弦されているため基本的に転調はできないが、任意に弦ごとに取り付けるレバーによりある程度の臨時記号には対応が可能。
「コティカンテレ」という名称は、1940年代にパウル・サルミネン(Paul Salminen; 1887-1949)が考案した形状のものをFazer社が販売をはじめた際の商標であったが、現在では一般名として使用されている。
ホームカンテレ
コンサートカンテレ
[芬: konserttikantele, koneistokantele, mekanikkikantele]
レバーをチェンジすることにより転調が可能なクロマティック機能が追加された大型カンテレ。1920年代にパウル・サルミネン(Paul Salminen; 1887-1949)によって開発された。レバーの仕組みはグランドハープから着想を得たとされる。
メカニックカンテレ
サ行
サウンドホール
[芬: ääniöaukio]
楽器本体の表面あるいは側面に開けられた穴のこと。弦から楽器本体に伝わった音を外部に向かって放出する役割をもつ。
響孔
魚のカンテレ
[芬: kalankantele, haudenkantele]
『カレワラ』第40~41章でヴァイナモイネンにより創造される1番目のカンテレ。カマスのカンテレとも。
サンポの奪回を目指し、ヴァイナモイネン一行は船でポホヨラを目指す途中、船が巨大なカマスの背に座礁する。倒したカマスを調理し盛大な宴を催す中、ヴァイナモイネンは残ったカマスの骨から楽器カンテレを創り出すが誰一人その楽器を弾くことができない。ヴァイナモイネンが奏で始めるとその美しい音色にあらゆる生物、神々、月や太陽までもがその音に聞きほれ涙した。
サーリヤルヴィカンテレ
[芬: Saarijärvikantele]
1. 中部フィンランドに位置する町サーリヤルヴィで発展したスティックをもちいた奏法。木の棒などを用いコードをかき鳴らすように弾く。
2. サーリヤルヴィの職人たちにより製作された共通の形態をもつカンテレ。サウンドホールには各職人たちによって竪琴の模様が装飾されている。弦数は20弦前後で、バス弦がつけられることも多い。
スティック奏法
消音板
[芬: sammutuslauta]
弦の振動を弱めたり、静止させたりするために取り付けられた板。
ミュート板, ダンパー
白樺のカンテレ
[芬: koivun kantele]
『カレワラ』第44章の中でヴァイナモイネンにより創造される2番目のカンテレ。
戦争が終わり平和がもたらされた中、ヴァイナモイネンは湖に沈んだカンテレを探そうするが見つからない。帰り道、草原で悲しみにくれる白樺の木と出会ったヴァイナモイネンは、伐採されても人々の喜びになるようにと白樺からカンテレを作ることを考え、胴体を作る。草原で歌っていた乙女の髪の毛を弦にし、樫の木で鳴いていたカッコウの口からこぼれた金と銀をつかって釘を作り、弦を胴体に固定した。
タ行
チューニングレバー
[芬: vipu, sävelvaihtajan vipu]
弦の張力を切替え、半音階調整を行うためのレバー。コンサートカンテレにおけるメカニックシステム、各弦にとりつけるタイプのものがある。
調弦レバー, 半音階レバー
チューニングペグ
[芬: viritystappi]
弦を楽器本体に固定し、張力を保つ部位。木製あるいは金属製のペグをまわし、張力を調整することによって調弦(チューニング)を行う。
チューニングピン
チューニングピン
[芬: viritystappi]
弦を楽器本体に固定し、張力を保つ部位。ピンをチューニングハンマーでまわし、張力を調整することによって調弦(チューニング)を行う。
チューニングペグ
テールピース
[芬: varras]
小型カンテレにおいて、チューニングピンとは反対側に設置された弦を固定するための棒。ポンシのアーチ両側端の側壁間を貫通している。
ロッド, 緒止め棒
トラディッショナルタイプ
[芬: perinteinen]
ポンシのある胴尾からチューニングペグの側に向かって、幅がやや広がっていく羽根の形をしたカンテレ。もっとも伝統的な形状。
伝統タイプ
ナ行
長い方の側面
[芬: pitkä sivu]
1. 楽器の横幅寸法が長くなっている側の側面、またはその側板。通常、低音弦側となる。
2. 長い弦(低音)側を手前にして弾くスタイル。コンサートカンテレの開発以降、このスタイルが主流となっていった。
ハ行
ハーモニクスマーク
[芬: huiluäänimerkki]
ハーモニクス奏法によって倍音を響かせる位置を示す印。
ピッコロカンテレ
[芬: piccolo kantele]
5弦カンテレのおよそ半分程度の大きさで、通常の5弦カンテレよりも1オクターブ高い音がでるカンテレ。
ペリマンニ
[芬: pelimanni]
楽譜を用いずに耳と修練とで音楽を継承する大衆音楽家。地域の祭典を盛り上げるために有志で集まった人々がその場その場で求められた多種多様なダンス音楽を奏で、地域色豊かな数々の旋律を弾き継いできた。
スウェーデンからやってきた音楽旅団がフィンランドの農村部へ定着し、音楽を通して地域に根付いていったのが始まりとされる。
ポンシ
[芬: ponsi]
小型カンテレの胴尾の付け根につけられた、凸出した接合部。胴尾側はアーチ状になっており、アーチ両側端の側壁に弦を留めるロッドを貫通させている。演奏中にはこの上に腕を軽く添えることも多い。
マ行
短い方の側面
[芬: lyhyt sivu]
1. 楽器の横幅寸法が短くなっている側の側面、またはその側板。通常、高音弦側となる。
2. 短い弦(高音)側を手前にして弾くスタイル。ハーパヴェシ、ペルホンヨキラークソ、サーリヤルヴィなどの地域を中心に今でも継承されている。
モダンタイプ
[芬: moderni]
チューニングペグ側に反響板の役割もかねた幅広いウイング(翼)をもつカンテレ。底板のない場合が多く、その場合は奏者の身体を共鳴胴の一部としてもちいるため肩から下げて演奏される。
ヤ行
ラ行
ラーティッコカンテレ
[芬: laatikkokantele]
箱型カンテレ。板状の木片を組み立てて作られるカンテレ。現在のカンテレは大小問わずこのタイプが多い。
ルノラウル
フィンランド、カレリア、イングリア周辺域で古くから歌い継がれてきた民俗詩歌。3~5音程の単純な旋律にあわせ、時と場所に応じて英雄物語やまじない、諺、賞賛、戒め、自らの感情などが即興的に表されてきた。