
Väinämöisen nuorimmaiset: Viisikielisellä kanteleella Haapaveden tyyliin
ヴァイナモイネンの最後の継承者たち: ハーパヴェシスタイルの5弦カンテレ
編著:オウティ・リンナランタ(Outi Linnaranta)
印刷地:Helsinki
出版社:Sibelius-Akatemian kansanmusiikin osasto
出版年:2002年
対象:5弦カンテレ
※CDつき
アンッティ・ラントネン(Antti Rantonen; 1877–1961)は、戦後のフィンランドにおいて唯一のこった5弦カンテレ奏者だと思われていたため、民俗学者A.O.ヴァイサネン(A. O. Väisänen; 1890-1969)によって「ヴァイナモイネンの末子」と名付けられ、彼の独特な奏法は「ラントネン奏法」と呼ばれています。
実際には、演奏活動を広くは行わずともハーパヴェシには5弦カンテレを弾く奏者が何人かいました。オウティ・リンナランタ(Outi Linnaranta)は、シベリウス音楽院在学中の修士研究のテーマとして彼らのレパートリーと指使い、ハーパヴェシで弾かれた「ラントネン奏法」を分析し、まとめあげました。その成果として出版されたのが『Väinämöisen nuorimmaiset(ヴァイナモイネンの最後の継承者たち)』です。
楽譜集であると同時に、ハーパヴェシの5弦カンテレ伝統の解説書であり、「ラントネン奏法」の教本でもある。おまけに編者による見本演奏のCDまでついた実に素晴らしい一冊です。

基本的なテクニックを紹介した後は、各奏者ごとのレパートリー譜、末尾には編者が選んだ「ラントネン奏法」を用いた5弦向けの練習曲が続きます。
紹介されているのは次の奏者たち。
中には同じレパートリー曲も含まれますが、奏者それぞれの装飾・指使いを比較することができます。
・アンッティ・ラントネン(Antti Rantonen)
・リーカ・ペンッティ(Riika Pentti)
・イロナ・ポルマ(Ilona Porma)
・マルッティ・ポケラ(Martti Pokela)
マルッティ・ポケラが語った各奏者とのエピソードが添えられているのも嬉しいことで、それぞれの人柄などを知ることができます。
「ラントネン奏法」は、コード奏法も使うために「ミックス奏法」と紹介されてしまうことがあるのですが、実際にはミックス奏法をベースに、開放状態で鳴らしたアルペジオをコードの指つきで押さえることでコード音を響かせるテクニックや、はじき弾きによる装飾を多用したスタイルです。
華やかな装飾音たちは、CDを聞いてもなかなかどのように弾いているのか分からないほど、うまくメロディと一体化されています。音源とあわせて楽譜とじっくり向き合うことで、少しずつ理解できていきます。
この教本・楽譜集だけでも素晴らしいのですが、編者による補助教材がオンラインで公開されています。

手元や正面から映した動画に、追加の練習曲まで。至れり尽くせり、ですね。
解説などは翻訳機能を活用して読んでみて下さい。
本当におススメの一冊、ぜひ「ラントネン奏法」を用いた5弦カンテレのテクニックを学びみましょう!
楽譜集のご購入は フィンランド民俗音楽協会, IMU-Inkoon musiikkiなどからどうぞ。
※楽譜集のタイトル和訳は、日本カンテレ友の会による仮訳