カンテレ奏者、カンテレ作曲家であり、本職は牧師であるハンヌ・スルヤラハティ(Hannu Syrjälahti)が1990年に出したCD『Kannel(1990, Bluebird Music)』には、カンテレのために作曲された楽曲や、彼のオリジナル曲が収められた1枚です。
楽曲リストの最後に流れるのは、彼がはじめて作曲した『Iltakaste Ilomantsissa』。キラキラとした音の粒が勢いよく下降する印象的な出だしは、カンテレという楽器の響きの美しさをもっとも雄弁に伝えてくれるといっても過言ではないでしょう。この曲に憧れ、演奏する日を夢見て練習に励むカンテレ少女たちが多いのも頷けます。
タイトルを直訳すると「イロマンツィの夕露」。CD『SYYSPÄIVÄNÄ(秋の日に)』では「イロマンッチの夜露」と、日本のカンテレ奏者はざた雅子さんのCD『カンテレ』では「夕映えのしずく」と訳されています。
イロマンツィとは、ロシアの国境沿いにあるフィンランドの町の名前。
夏休みにはカンテレキャンプが開催され、全国からカンテレを愛好する人々が(とくに少年少女が)集まっていました。今では場所をヨエンスーに移して開催されています。
1978年の夏、カンテレキャンプに講師として参加していたハンヌ・スルヤラハティは、暴風雨がとおり過ぎ露にぬれた草の香りと美しい風景にインスピレーションを受け、たった一晩でこの曲を書き上げました。初めての作ったこの曲はやがて彼の代表作となり、多くのカンテレ奏者・愛好家が今でも弾き続けています。
紹介する動画はCD音声のみなので演奏風景を見ることはできませんが、ハンヌ・スルヤラハティ自身による曲の解釈を感じ取ることができます。抒情感たっぷりですね。
なお、この曲の誕生に関しては、カンテレ奏者はざた雅子さんのWEBサイトで詳しく紹介されていますので、そちらもご参照ください。