2024/10/2 更新
著作者の了承を頂き、本ドキュメンタリーの日本語字幕版を日本カンテレ友の会にて製作いたしました。
字幕作成および無料での上映、当会Youtubeチャンネルでの公開に快く承諾下さいましたセッポ・プルッキネン氏(Videofakta Oy)に心から感謝申し上げます。
Hoppu Martti
MARTTI POKELA, professori. Suomalaisen kanteleen GRAND OLD MAN
せっかち マルッティ
マルッティ・ポケラ:フィンランドにおけるカンテレのGRAND OLD MAN
製作:Videofakta Oy
撮影:Seppo Pulkkinen
45分, 2021年
日本語字幕:日本カンテレ友の会(MT)
協力:Sinikka Kontio, Lasse Lehtonen, Chie Koono
近代カンテレの父、マルッティ・ポケラ(Martti Pokela;1924-2007)の軌跡を紹介するこちらのドキュメンタリー番組は、今ではもう直接聴く・見ることの叶わないポケラによるカンテレ(&フィドル)演奏の姿を記録した貴重な映像です。
冒頭、5弦カンテレで自身の曲『Kellopolkka(鐘のポルカ)』をつま弾くポケラの指は実に軽やかで、晩年にさしかかっているとは思えません。
前半は音楽をすり込むように身体に伝えてくれた両親との思い出、故郷ハーパヴェシでの音楽活動、家族バンドなどカンテレに出会う前の様子が語られています。
世界的にフォーク・ミュージックが盛んになる中、”フォークを奏でるのはギターだ”という当たり前の風潮を打ちこわしてカンテレでの活動にシフトすると、常識にとらわれないフィンランドならではの”フォーク・ミュージック”に注目が集まります。兵士として戦争に従軍した時期を経て平和を取り戻すと、その後の生涯は音楽に身を捧げるものとなりました。
18分過ぎからはフィンランドの民俗音楽奏者、研究者たちのインタビュー、シベリウス・アカデミーの授業の様子を交えながら貴重なポケラの演奏風景が満載です。
ポケラ以前は”お行儀のよい”民俗楽器であった大型カンテレを、ポケラは躍動感のある本来の民俗楽器へ再生させ、大型・小型問わず自由に楽しむ中で新たな奏法をも生み出しました。人差し指奏法や、ハーモニクスの使い方、弦を叩き鳴らす表現、半音階レバーでの揺らぎ(レバーグリッサンド)など、彼の自由なアイデアが今では現代曲や芸術音楽にも用いられていることを思うと、音楽にジャンル付けをする無意味さも感じてしまいます。
映像の中で、ポケラは「自身を「作曲家」だとは思わない、私はただカンテレ音楽を形成する探究者である」と語っています。カンテレへのあくなき探究心が残してくれた功績に、ただただ感謝の思いです。
タイトルの”Hoppu Martti”とは、ペリマンニ音楽家として自らが名乗る芸名のようなもの。Hoppuとは「忙しさ」の意をもつ俗語で、「せっかち」と訳しました。忙しい中でも常に全力投球でカンテレに向き合い疾走した彼の人生、あるいは、彼の奏でる音楽・語りのリズムを捉えると、どことなしかその名が意味するものを感じられる気がします。映像の中でポケラは「自分はペリマンニだ、完全にペリマンニなんだ」とも語っています。
映像では、マスターペリマンニであるトイヴォ・アラスパー(Toivo Alaspää ;1929–2007)やエルッキ・ラッシラ(Erkki Lassila)の演奏風景、それを楽しむポケラの姿も見ることができます。また、現在第一線で活躍する奏者たちの若き頃の姿を探してみるのも楽しみの一つ。
偉大なカンテレ功労者の言葉に、音楽に、ぜひ耳を傾けてみて下さい。
オリジナル版(フィンランド語, 字幕なし)はこちら。